石は古来より生活に深く関わってきました。そんな中で生まれた多様な仕上げ加工は現代にも受け継がれています。

自然素材に職人の技術が加わることで、石に生まれる表情は多彩になり人の目を楽しませてくれます。

またそれに留まらず、用途に合わせて使用することで実用性を上げることもできます。

細工形状の特徴

地域や時代、文化の違いによって多様な細工形状があります。その中でも目にすることの多い細工形状をいくつかご紹介いたします。

銀杏面取り

角に銀杏の形を削りだした面取りの形状です。通常の丸面取りに比べて、高級感のある仕上がりになります。

【本式銀杏面取】

手加工のみで作業するため、丸みのある綺麗な形状を形成するには、熟練工の高度な技術が必要となります。また、役物加工と手磨き加工の息が合わないと美しく仕上げることはできません。

【略式銀杏面取】

重箱によく見られる加工のため、重箱面取とも呼ばれます。本式銀杏面取に比べると若干費用が下がります。

蓮華

竿石の下に置かれることの多い、蓮の花を象った加工です。

蓮華は「供花」であり、浄土の蓮の花の上に生まれ変わる「極楽浄土」の表現でもあり、それから泥中に清く咲く蓮の花ということから「悟りの世界」の象徴ともされています。

蓮華には上蓮華・逆蓮華があり、それぞれを単体で置く場合と、上蓮華と逆蓮華の上下二段を置く場合とがあります。

尚、形状に於いても時代・地域により様々あります。玉蓮華・スジ蓮華は関東に多く、庵治型は関西に多く見られます。二つ割玉蓮華は鎌倉時代の形状です。

蓮華を美しく見せるために、彫りを深くしラインをシャープにすることで磨きの作業は難しくなりますが、曲線の美しい仕上がりを重視した加工を心がけています。

亀腹

亀の甲羅の曲線を象った代表的な高級墓石加工です。S字曲線のため、外アールと内アールを波打つことなく形成するには高い技術を必要とします。

小段を付けたものを「切り出し亀腹加工」、段を付けないものを「亀腹加工」と言い分けます。

竿石の表面を階段状に一段もしくは二段、掘り下げた細工形状です。

彫刻部分を額にはめたように見せるので、上品な高級感が出ます。

役物加工、手磨き加工、機械研磨加工の息が合わないと、四隅の部分を平滑にすることはできません。高度な技術を必要とする、念入りに作り込まれた加工です。

花瓶型花立て

花立ての首部分と裾を絞り、花瓶の形状に加工したもので、丸型と角型があります。(写真は角型)

お墓の中に配置することで、直線的な中にアクセントとしての丸みを生み出します。

七宝抜き

灯篭の灯火を入れる火袋部材の正面に施される、網目状の飾り模様です。

この七宝模様は吉祥紋で、無限に連鎖する輪の交叉から成る模様であることから「世の中の財宝」「無限の子孫繁栄」を表します。

繊細な模様のため、技術の差が顕著に現れる加工です。


仕上げ方法の種類と特徴

石は、仕上げ方次第で様々な表情をみせてくれます。

同じ石種でも、まったく違った趣と特徴を持つようになる仕上げ方法の、その違いをご紹介いたします。

自然肌仕上げ

自然が作った割肌表面で、風合いには同じものはありません。カサネ肌・二番肌など、石の方向によって様々な表情をみせてくれます。自然によってのみ、作る事の出来る美しさです。
【用途】記念碑、床材、壁材など

コブ出し仕上げ

人工的に作った、表面に大きな凹凸のある艶のない割肌です。 ゴツゴツとした、野趣に富んだ風合いが出ます。 変化を持たせたい場合に用いる事の多い仕上げ方法です。
【用途】石垣、床材、壁材など

ノミ切り仕上げ

ノミを使用して、荒く平面に仕上げる方法で、ノミ跡の窪みに趣があります。手加工であるため、技量によって違いがあります。現在最も難しく、高級な加工だと言えます。
【用途】神社の参道、仏像など


ビシャン仕上げ

ピラミッド状の突起の並んだ金槌で叩く、存在感ある仕上げ方法です。突起の数が、16,36,64,100の順できめを細かくできます。技術者が少なく、技量が問われます。
【用途】墓石、庭材、床材、燈籠、仏像など

コタタキ仕上げ

両刃と呼ばれる道具を使用し、表面に横スジの刃跡を付けて仕上げる方法です。昔はビシャンの後の高級仕上げとして用いられました。職人が丹念に叩いていきます。
【用途】墓石、床材、燈籠、仏像など

バーナー仕上げ

石の表面をジェットバーナーの火炎で炙ることで、表面の結晶組織を熱膨張させ、はじき飛ばして仕上げます。ざらざらとした表面になります。滑り止めとして、よく利用されます。
【用途】床材など


切削仕上げ

ダイヤモンドブレードと呼ばれる石材用のノコギリで切って仕上げた面です。凸凹はないものの、艶なしで、ノコギリで引きっぱなしの荒い面です。
【用途】外柵の巻き石、床材など

ブラスト仕上げ

石材よりも硬いカーボン粒子を高圧の圧縮空気に混合して吹き付けます。表面をざらざらと仕上げます。字彫を行ったり、割肌に使用して、風化した様に見せる事も出来ます。
【用途】庭材、床材、壁材など

サンダー仕上げ

切削仕上げの上に電動グランダーで100番程度の砥石を使用して表面を仕上げる方法です。艶消しになります。
【用途】外柵の巻石、仏像など


水磨き仕上げ

艶消しの研磨仕上げになります。800番の砥石を使用して仕上げます。マット感の美しい仕上げです。
【用途】墓石、床材、壁材、建材、モニュメントなど

本磨き仕上げ

艶出しを行った、光沢感のある鏡の様な表面仕上げです。汚れにくく、石の色や模様、目合が最もよく分かります。切断した後、荒磨き、水磨き、本磨きの順に仕上げていきます。
【用途】墓石、建材など

本磨き仕上げ

艶出しを行った、光沢感のある鏡の様な表面仕上げです。汚れにくく、石の色や模様、目合が最もよく分かります。切断した後、荒磨き、水磨き、本磨きの順に仕上げていきます。
【用途】墓石、建材など


仕上げにおける手加工の道具

ノミ切り仕上げ

ノミを使用して、荒く平面に仕上げる方法で、ノミ跡の窪みに趣があります。1点1点の手加工であるため、技量によって違いがあります。現在最も難しく、高級な加工だと言えます。

ビシャン仕上げ

ピラミッド状の突起の並んだ金槌で叩く、存在感ある仕上げ方法です。突起の数が16ヶ、36ヶ、64ヶ、100ヶの順できめを細かくでき、ノミよりも小さい凸凹がある表面になります。技術者が少なく、技量を必要とする仕上げです。

コタタキ仕上げ

両刃と呼ばれる道具を使用し、表面に横スジの刃跡を付けて仕上げる方法です。昔はビシャンの後の高級仕上げとして用いられました。平行に同じ深さの刃跡を一筋ずつ下から上へ丹念に叩いて仕上げていきます。